「妖精あそび、というのがあるそうなのですよ」

 と、鼻息を吐きながら、トトントがいった。いつもどおり、学校の仲良し三人組で、昼休み集まった、そのときのことである。

「は?」

 唐突な台詞に、リネは目をぱちくりさせた。眼鏡をかけ、いかにもお勉強ができそうで、しょっちゅうどこかから変な知識を仕入れてくるトトントは、その眼鏡をきらりと光らせつつも声を潜めた。

「むかし、魔法の知識のある男たちがしばしばおこなっていた遊技です。魔法を使って、森の妖精を呼び出し、その妖精たちをやっちゃうっていう」

放課後の森へ

「……へぇ」

 やっちゃうの意味くらい、リネにもわかる。口元をちょっと引きつらせ、あきれたような半眼になったとき、クーロが興奮した声でいった。

「マジそれ? ほんと? マジやりてえ」

 クーロはトトントやリネに比べてやや小柄で、ふたりより年下に見えることもよくあるが、それでも同じ十二歳の男の子である。普段より、性欲は十分にもてあましている。

「ふふ、そう来ると思ってましたよ」

 トトントはそうほくそ笑み、懐から小さな冊子を取り出した。かなりぼろぼろで、相当に古い。

「実家の蔵で、昨晩この本を見つけたのです。妖精あそびのことを知ったのはこの本からで、そしてこの本には、その妖精あそびのやり方が載っています」

「すげえ!」

 とクーロが声をあげた。一方リネは無言でいた。トトントが嘘をついているとは思わないが、そんな本、インチキに決まってる。

「きょうさっそく、試してみようと思うのですが、おふたりはどうです」

「やるやる、絶対やる」

 クーロは犬みたいにうなずいたが、リネはあまりに馬鹿馬鹿しく、

「いや、ぼくは」

 いいかけたとき、ふたりに冷たい視線を向けられた。

「なんです。ほんとは興味あるくせに。いけ好かない野郎ですね」

「いけ好かないぜ」

「わかった。……つきあうよ」

 そうして三人、放課後、郊外の森へ向かった。

妖精を召喚する儀式

 他人が訪れることがないであろう、ある程度森の奥まで来ると、トトントはナイフで木の幹に傷をつけ、その樹液を試験管に採取した。

「この樹液を」

 トトントは奇妙な白濁液が入った小さな瓶を取り出して、

「昨晩調合したこの魔法薬に混ぜるのです。そして混ぜた液で魔法陣を描く―――

「…………」

 その魔法薬とやらがどんな材料によって調合されたものなのか、リネは訊こうかと思ったが、たぶん気分が悪くなるであろうからやめておいた。

「さ、はじめますよ」

 トトントが瓶を開けた。とても愉快とはいえない臭いが立ちこめ、リネはいやな顔をしたが、クーロは興味津々にのぞき込んだ。

 トトントが、樹液を白濁液に混ぜた。それから比較的広くて平たい場所に、その合成液をもって、地面に、案外にシンプルな魔法陣を描きはじめた。

 それがおわると、トトントは魔法陣に両手を向けて、おかしげな呪文を唱えだした。

「アビブ、バーダ、ドドリド、パポンプ……」

 そんな意味不明の言葉を一分ぐらいつづけた頃だろうか、不意にあたりに怪しい風が吹き始めた。

「おおっ」

 とクーロが声をあげ、

「え、ええっ!?」

 リネは口元を引きつらせた。

 そのうちに、光をまとったような、あるいはきらめきを乗せたような風が魔法陣の中央に集まり、みっつの人型を取り始めた。

「せ、成功ですぅ!」

 トトントがうわずった声をあげた。

 風が、やんで、魔法陣の中心には、三人の女の子が、きょとんとした顔で座り込んでいた。

 ひとりは丸い目をした赤毛の女の子であり、ひとりはちょっと垂れ目の緑色の髪をした女の子であり、もうひとりはつり目の紫毛の女の子だった。

 みな、とがった耳だの、透明な羽だの、人間にはない特徴を備えていたが、一見は小さな、幼女にしか見えなかった。

妖精と少年たち

「…………」

「…………」

 三人の男の子と三人の妖精は、互いに無言で見つめあった。

 性欲をもてあましている、とはいえ三人とも童貞で、それなりに善良な少年たちであったから、いざこの状況に及んでみると、では遠慮なくレイプさせていただこう、とはいかなかった。

 と、妖精のひとり―――赤毛の妖精が、トトントが地面に放置した、例の冊子に目をとめた。

「その本―――

 緑毛の妖精が、得心したように微笑んだ。

「ああ、妖精あそびね」

 紫髪の妖精が、どこか淫靡な笑みを浮かべた。

「ひさしぶりね。最近ではそんなことする人間もすっかりいなくなっちゃったから。―――楽しみだわ」

 三人の妖精が、身につけていた不思議な感じのする色合いのワンピースを脱ぎはじめたので、少年たちは無言のまま心臓を跳ねあがらせた。

 妖精たちは下着を身につけてはいなかった。ワンピースを脱ぐと、彼女たちはその時点で全裸になった。両足のあいだは幼女同様無毛であったが、緑毛の妖精には大きな、紫毛の妖精には中くらいの、赤毛の妖精には小ぶりな、胸にはそれぞれふくらみがあった。

 赤毛の妖精がクーロに、緑毛の妖精がトトントに、紫毛の妖精がリネに、四つん這いになって近づいていった。少年たちは一歩後じさった。

 紫毛の妖精が笑った。

「どうして逃げるの? わたしたちとあそびたかったんでしょ?」

 そういわれると、戸惑いや不安感のなかに期待感もあり、男の子たちは動けなくなった。

 三人の妖精は少年たちの前まで来ると、手慣れた様子で、彼らのズボンのベルトを外しはじめた。ズボンをおろし、その下の下着もためらいなくおろした。

 赤毛の妖精が、クーロのペニスを見ていった。

「ちっちゃくてかわいいおちんちん。でも精液はいっぱい出そうね」

 緑毛の妖精が、トトントの股間をながめていった。

「へえ、もう剥けてるのね。じゃ、ちょっとくらい過激なことしちゃっても大丈夫かな?」

 紫毛の妖精が、リネのものにふれながらいった。

「結構大きい……子供のくせに。これは期待してよさそうね」

 そうして妖精たちはあそびはじめた。