ヤビユは七人兄弟の末っ子として生まれた。

 顔立ちは美しかったが、生まれつき右足が悪く、歩くとびっこになり、駆け足することもままならなかった。

 家は貧しい農家であった。彼が十一歳の年、その地方を飢饉が襲い、家庭はますます貧窮した。

捨てられた子

 ある日ヤビユは父から、

「ふたりで山に遊びに行こう」

 と誘われた。

 父とともに、ふたりで一頭の馬に乗り、出かけた。

 どことも知れぬ山奥で、休憩するのにちょうど良さそうな広場を見つけたので、そこで弁当にすることにした。

 弁当箱を開け、ヤビユは驚いた。ここ最近、どころではない、ヤビユが生まれてこのかた見たこともないほど豪華な料理が、そこにはつまっていた。肉も、チーズも、たっぷりある。

 父とともに、おなかいっぱいになるまで食べ、なお余った。食後、父は立ちあがり「小便だ。ちょっとここで待っておいで」と、草むらのほうへ行ってしまった。

 しばらくして、馬の駆ける蹄の音が聞こえた。ヤビユが立ちあがると、父を乗せた馬が、もと来た道を駆け去っていくのが見えた。

 追おうとはしなかった。びっこの自分が追いかけたところで、途中でこけてしまうのが落ちだからだ。

 こんなことだろうとは―――正直思っていた。窮まった家庭を救うため、びっこのヤビユが口減らしに選ばれたことは、なんの不思議でもないことだった。

 これからどうしようと、ぼんやりと思った。弁当の残りはまだあるが、もってせいぜい三~四日であろう。

 特別いい考えなど浮かぶはずもなく、とりあえずそのあたりを歩いてみようと思い立った。右足を引きずりながら、ヤビユは森の奥の方へ進んだ。

 ここはどこなのだろう、とヤビユは歩きながら考えた。

 ふと、思いだした話があった。幼いころに聞かされた、ある伝承。

 遠く離れた山奥に、帰らずの森がある。そこにさまよいこんだ人間は、誰ひとり戻ってこない。その森が、夢の国へとつづいているからだ。だから、悪いことする子はその森に捨ててしまうよ―――

 と、ヤビユの視界のすみに、きらきらと輝くものがうつった。

 そちらを向くと、茂みの向こうに、泉らしきものがあるのが見えた。

 ちょっと苦労して、茂みを乗り越え、ヤビユは泉の前まで来た。

 なんと綺麗な泉だろう―――

 恍惚とする想いで、ヤビユはその場にたたずんだ。

 日の光を反射しての水面のきらめきは、まるで宝石のようだった。

 水はきわめて澄んでいたが、案外に深いのか、水底は青々として見えなかった。

泉の化身、全裸の美少女

「だれ?」

 とそのとき声がして、ヤビユはびっくりした。

 あきらかに誰もいない、泉のほうから、声はした。

 目をしばたたかせていると、泉の中心がぼこりと盛りあがり、その盛りあがった水が別の形をとりはじめた。

 あまりのことに声もなくたたずんでいると、水はヤビユと同じくらいの年頃の、長い髪の少女の姿をとった。

 少女の姿は半透明で、水底と同じ美しい青さをたたえていた。

 ヤビユは呆然としていたが、少女が一糸まとわぬ裸体であるのに気付き、あわてて目をそらした。

 少女は不思議そうに首を傾げると、波紋を発生させつつヤビユのもとへ駆け―――けっして沈もうとはしなかった―――また、

「だれ?」

 と訊いた。

 ヤビユはこたえた。

「ヤ、ヤビユ」

「そう、ヤビユね。わたし、リペ。一緒に遊ぼ」

 右手をとられ、ヤビユは動揺した。この少女は、いったい何者なのだろう。

 泉の妖精かなにかが、水を使ってひとの姿を現したものだろうか。

 なんらかの魔法的な力で、水が固体化しているに違いない少女の手は、冷たかったけれども、ぷにぷにして柔らかだった。

 リペがいった。

「あ、でも、その格好じゃ、服が濡れちゃうね。脱いじゃお?」

「え、でも」
 
 ヤビユが戸惑ったのは、裸体を―――なにより少女の裸を目にして勃起してしまったペニスを―――彼女に見られることに、抵抗があったからだ。

「いいから」

 そういって、リペがヤビユのシャツの、その襟元に手を伸ばした。

 指先から滴った水が、生き物のように動き、シャツと、ズボンのボタンを外していった。

 リペの手が、シャツを脱がせ、ズボンを脱がせ、そして上の下着を脱がせた。

 つづいて下の下着も引きずり下ろされ、かたく上を向いたペニスが少女の目の前でぶるんと跳ねたが、リペは気にしたふうもなかった。

 最後に靴と靴下も脱がせ、リペは再びヤビユの手を取った。

「さ、いこ。大丈夫、わたしと一緒なら沈まないから」

 リペはヤビユの手を引きながら、再び泉の中央へと向かった。

 彼女のいったとおり、ヤビユのからだもリペ同様、泉の上を歩いても波紋を立たせるばかりで、水のなかに沈み込んだりはしなかった。

 少女に導かれるまま、ヤビユは泉の上、宝石のようなきらめきのなかで、彼女と踊った。

 リペのリードが巧みなのか、あるいは別の魔法が働いているのか、水面を蹴っても、足をついても負担は感じず、ヤビユはびっこの不便さを覚えなかった。

 たまにからだを密着させてくるから、ペニスがリペの太ももや恥丘へあたったが、やはり彼女のにこにこした表情に変化はなく……

 ……ひょっとして、そういうフリをしているだけなのではないかと、そうヤビユが思った瞬間、その心を読んだかのように、不意にリペが妖しい笑みを浮かべた。

「うん、フリだよ。じらしてるだけ。そろそろおちんちんで遊ぼっか」

水妖リペの包茎洗い。ペニスが見える透明フェラ

「え―――?」

 といいかけたヤビユに、リペは後ろから抱きついた。

 冷たく柔らかな指先が、少年のペニスに触れた。

「あっ」とヤビユが声をあげると、服を脱がせたときと同じく、水―――実際肌で感じてみると妙にぬめり気のある水が、少女の指から溢れ、ヤビユの性器を這いまわりはじめた。

「あ、なにこれ」

 水は睾丸を、ペニスの幹を撫でまわし、亀頭の周囲を覆っている包皮の、その内側にまで進入してきた。

「まずはきれいにしようね。出したくなったら、出しちゃっていいよ」

 どうやらリペはその水をもって、性器の汚れや、亀頭についた恥垢を洗い落とそうとしているらしい。

 一方、性感を与えるつもりも十分にあるようで、彼女はそのひんやりとした手をもって、ヤビユのペニスをリズミカルにしごきはじめた。

 性的な刺激に不慣れな少年が、そう長く耐えられるはずもなかった。

「あ、出る、出ちゃう」

 そんな声とともに、ヤビユのペニスの先端から、真白い精液が、勢いよく飛び出した。

 精液は綺麗な放物線を描いてかなりの距離を飛び、泉のなかに落下するや、すっと溶けてしまった。

「ふふ、おいしい」

 と、リペがなぜかそういった。まだ、かたさを保ったペニスを優しくしごきながら、

「こんどは、口でしてあげるね」

 ヤビユの前にまわりこみ、水面の上にしゃがみ込んだ。

 目を閉じて、軽く舌を出しながら口を開け、リペはヤビユのペニスを口にくわえた。

「ああ、すごい」

 ヤビユはあえいだ。

 リペの口のなかで、ヤビユのペニスを刺激するものは、少女の舌だけではなかった。

 唾液と―――そういっていいのかどうかはわからないが、リペの口内から分泌される、やはりぬめった液体は、勝手に動いて、ペニスに絡みついてきた。

 リペの体が半透明であるせいで、下を向けば、自分の性器が少女の口内に入っているのがはっきり見える。

 そんな視覚的な効果も、ヤビユが絶頂に達するのを助けた。

「ああ、いく、いく!」

 ヤビユは身をのけぞらせた。

 リペの口内で、彼のペニスはいくども跳ね、白濁液を彼女のなかへそそぎ込んでいった。

 少年の精液は、本来水である少女の体内に入るや否や、やはり溶けて消えてしまった。

「ふふ―――素敵」

 いいながら、リペはヤビユのペニスを口から出した。

 その尿道口から、あまった精液がにじみ出すのを見るや、またしゃぶりついた。

 精液の残滓を舐め取り、さらにはやや萎えかけた少年の性器を再び元気にしてあげる、そのふたつの目的のためらしかった。

 果たして、リペが再び性器を口から取り出したとき、ヤビユのペニスは最初同様のかたさを取り戻していた。

死へと向かう水妖との姦淫

「それじゃ、横になろ」

 リペにうながされ、泉の上に横たわりながら、ヤビユは奇妙な感覚を覚えていた。

 自分のなかにある大切なもの―――いうなれば生命力が、失われている……ような感じ。

 しかし恐怖心はなく、むしろ体も心も、リペから与えられる快感のみを求めていた。

 リペがヤビユの上にまたがってきて、手をもって少年のペニスを女性器にあてがった。

「いくね」

 少女の腰が沈められるや否や、これまでを超える快感が、ヤビユをおそった。

 少女の体内を構成するぬめった水はぐるぐると渦巻きつつ、上あるいは下から、本来あり得ぬ角度から、ヤビユのペニスを舐めまわした。

「ああ、すごい。気持ちいい、気持ちいいよ」

「ふふ、うれしい。じゃ、もっとすごいことしてあげる」

 いって、リペがヤビユにキスをした。

 少女の舌とともに、大量の水が体内に流し込まれたが、苦しさは感じなかった。

 んぱっ、とリペが口を離し、艶然と笑った。

「水のなかでしよ。大丈夫、いまのでおぼれなくなったから」

 次の瞬間、ふたりの体は泉のなかへと沈み込んでいた。

 リペのいったとおり、水中でも窒息はしなかったが声は出せなくなり、そして快感が倍増した。

 性感の中心はやはりペニスであったが、その他の体の全体―――手足も、胴体も、首も顔も髪の、尻の穴までもが、周囲のぬめった水に舐めまわされはじめたのだ。

 まるで元気のよい魚みたく、ヤビユとリペはつながったまま、水中を縦横無尽に動き回った。

 そうしてふと、ヤビユの視界に、地上からは見えなかった泉の底が―――そこに積みあがる幾つもの白骨が入り込んだ。

 ああ、やはりそうだったのだ―――とヤビユは朦朧とした気分で思った。

 少し話は違うようだが、やはりこここそ、伝承にある帰らずの森。

 リペは泉の妖精どころではなく、この泉そのものであり、そしてこの泉そのものが、ひとを喰らう妖魔であるのだ。

 もうじき自分も、精と生命力を残らずリペに吸い取られ、あの白骨の群れに仲間入りする。―――そうと理解しながら、やはり恐怖心はなく、ただ甘い官能と幸福感のみが、ヤビユのうちを満たしていた。

 リペが勢いよく腰をひねり、ヤビユは残り少ない生命力とともに、大量の精液を、リペのなかへと放出した。