
シェピアの孤児院 4
まだ半ば呆然としたまま、シェピアはパウロンの部屋をあとにした。
廊下で顔を左右に振り、気を取り直した。
一度浴室に行き、何枚かのタオルと、お湯を入れた桶を、トレイの上に載せ、こんどはカファンの部屋へと向かった。
パウロンを訊ねるときとはまた別種の緊張感―――あるいは厳粛な、といってもいいかもしれない気持ちが、シェピアのなかにはあった。
ミレンやパウロンの部屋を訪れたとき同様、ノックして入った。
ものの少ない殺風景な部屋には、一見すると誰もいなかったが、よく見ればベッドの掛け布団が膨らんでいる。やはり、横になっているらしかった。
病弱な弟、カファン
「カファン、起きてる?」
「……うん」
力ない声とともに、カファンがシェピアの方へ顔を向けた。
健康であったなら、パウロンに負けないほど美しかっただろうその顔は、あまりにも青白く、そして痩せこけていた。
「具合どう?」
「ちょっと、だるい」
「お風呂は、無理よね。体拭く?」
「うん……」
気だるげに、身を起こしたカファンの服を、シェピアは一枚ずつ脱がしていった。
上のパジャマとシャツ、それから下のパジャマとパンツ―――すべて脱がせた。
用意していたお湯にタオルを浸して、軽くしぼり、それでカファンの痩せこけた体をぬぐいはじめた。
弟の体を、ペニスを、タオルでぬぐう
十四歳のカファンは、ここに引き取られた当時―――五歳くらいのころから、ひどく病弱だった。
医者に診せても、原因はよくわからず、先天的な虚弱体質なのであろうとしかいわれなかった。
激しい運動はもちろん無理で、外に散歩に行くのさえ、かなり体調のいいときでないと難しかった。
具合が悪いときは、いつも部屋で、いまのように寝たきりになっている。
肩から始まり、骨と皮のみでできているような腕を拭いた。
それから背中、ひどくへこんだおなかをぬぐい、一度タオルをかえて、細い両足を、それから腰を浮かさせて尻も拭いた。
もう一度タオルをかえ、最後に性器を、シェピアは拭きはじめた。
肉体同様、カファンはペニスも貧弱だった。
その小ささは、痩せた肉体を見るとき以上に、シェピアを哀れな気持ちにさせた。
さすがにムーネよりはちょっと大きいが、正直ミレンのより小さい。しかも、どこかしなびたような感じがする。
袋を優しく拭いてやり、それから張りのない包皮を剥きおろして、細かなしわのよった亀頭を丁寧にぬぐってやったが、カファンのペニスは最後まで勃起することはなく、股間に垂れ下がったままだった。
「どうする? ほかにもなにか、してほしいことある?」
きょうは性処理の必要はないだろうと思いながらも、なにか望むところがあるかも知れないと考え、シェピアは訊ねた。
カファンは軽く、肩をふるわせてこたえた。
「ちょっと、さむい」
「――――――」
「あっためて、ほしい」
「ん、わかった」
うなずき、シェピアは立ちあがって、ガウンを脱いだ。
ショーツ一枚となり、カファンの隣に横になって、一緒に掛け布団をかぶった。
包み込むように、シェピアはカファンの背中へ両手をまわした。
足も、絡めあった。
カファンもシェピアの背中へ両腕をまわし、胸に顔をうずめていた。
しばらくそのままでいて、やがて乳房をくちびるに含み、乳首を舐めたり、吸ったりし始めた。
「ん……」
小さく声を出し、幼子に対するように、シェピアはカファンの頭を撫でてやった。
そうしていると、いつしか右の太もものあたりに、かたくて熱い感触がふれた。
「―――勃ってきたね」
「……うん」
「どうする? 体調悪いならやめといた方がいいかもしれないけど―――口でする?」
こくりと、カファンがうなずいたので、シェピアもうなずき返した。
布団にくるまったままシックスナイン
「冷えるといけないから、お布団はかぶったままでね」
布団のなかにもぐり込み、シェピアは暗闇のなか、カファンの体の感触を頼りに、彼のペニスを舐められる位置へと体を移動させた。
うまく、いわゆるシックスナインの体勢になれたので、ペニスに手を添え、まずは先端にキスをして、それから強すぎる刺激は与えぬよう、ごくゆっくりと亀頭を舐めまわしはじめた。
「あ……」
カファンのうっとりとした声が、布団のなかまで聞こえてきた。
シェピアはカファンの裏筋を舐め、睾丸もまた舐めてやった。
先端に戻り、ペニスを口に含んで、顔を前後にゆっくりと動かした。
そのまま時間をかけ、射精まで導いてやるつもりだったが、不意にカファンが、「姉さん……」とどこか真剣な声をしていったので、ペニスを口から出した。
ちょっと考え、体勢をもとどおりにし、カファンに向き合ってから、
「なに?」
と訊いた。
カファンはちょっとうつむいて、そしていった。
「姉さんと……したい」
「なに―――を?」
「ほんとうの、セックス」
「それは……だめだよ」
胸を締め付けられるような感覚を、確かに覚えながら、シェピアはそういった。
「それは、だめ。それはカファンにとっても大切なことだから。いつか、本当に好きなひとができたときのため、取っておくもの」
「そんなひと、できるわけない。できたとしても、ぼくなんかが相手にしてもらえるはず―――ない」
カファンがシェピアの胸に顔をうずめた。
「それに、本当に好きっていうなら、姉さんのことが、いちばん、本当に好きだ。だから、キスもしたい。セックスもしたい」
「だめ―――だめなの」
「姉さん」
「ほっぺになら、してあげる」
ちょっとごまかすようにいって、シェピアはカファンの頬に口づけた。
「あと、偽物のセックスなら―――いいよ。してあげる」
「にせもの?」
「うん」
偽物のセックス
うなずき、シェピアは横になったまま、ショーツを脱いだ。
それからカファンを仰向けにさせ、ペニスが膣内に入らぬよう注意しながら、彼の腰の上に馬乗りになり、互いの性器を密着させた。
「こうして、こすってあげる」
前後に腰を揺すり、みずからの性器をもって、カファンの性器を愛撫しだした。
「あ……姉さん、それいい」
カファンが甘い声を出した。
シェピアは頬を上気させ、軽くみぶるいした。
ここまで弟たちに性的な奉仕をし続けたシェピアである。その内にたまるものが全くないわけもなく、すぐに、彼女のヴァギナからは愛液があふれ出た。
「ねえさん……すごい」
「気持ちいい? よかった」
そんなことを口に出しながら、シェピアもすでに気持ちよくなっている。興奮もしている。無意識のうちに、腰の動きが速く、大きくなってゆく。
―――まずいかな?
そう思う。
性器と性器をこすりあわせ感じあう、この行為は、例によってパウロンがどこからか知識を仕入れてきて、彼によっておしえてもらったものだが、パウロンの巨根にくらべ、カファンのペニスは小さすぎる。
同じようにやっていると、勢いあまって、ペニスが膣内に入ってしまうかもしれない。
でも―――
「あっ、あっ、あっ」
シェピアの口からも、甘いあえぎがもれる。腰の動きはとまらない。もし入ってしまったら―――それはそれでいいかもしれない。そうなったら事故だ。いいわけがきく。
「カファン、カファン―――わたしも、わたしもよくなってきちゃった」
「ねえさん、ぼく、もう出そう」
「うん、いいよ。いって、いって!」
カファンのペニスがびくびくと跳ねながら射精するのを、シェピアは自身の外性器で感じた。
その動きは彼女の陰唇やクリトリスを刺激し、シェピアも同時にオルガスムに達した。
「ああ、ああ!」
高い声とともに、透明な液が、尿道口から吹き出し、カファンの腰まわりをびしょびしょに濡らしてしまった。
「……姉さん」
とカファンがいった。彼がまだ、シェピアとのキスや本物のセックスを望んでいることは、その切なげな視線からわかった。
「カファン……」
ちょっと瞳を潤ませながら、シェピアは性器周辺の感触を確認した。
カファンのペニスはシェピアのなかに―――入ってはいない。ほっとしたような、残念なような、複雑な気持ちになった。
「ん―――」
といって、ぎこちない笑みをつくり、シェピアはまた、カファンの頬にキスをした。