まだ半ば呆然としたまま、シェピアはパウロンの部屋をあとにした。

 廊下で顔を左右に振り、気を取り直した。

 一度浴室に行き、何枚かのタオルと、お湯を入れた桶を、トレイの上に載せ、こんどはカファンの部屋へと向かった。

 パウロンを訊ねるときとはまた別種の緊張感―――あるいは厳粛な、といってもいいかもしれない気持ちが、シェピアのなかにはあった。

 ミレンやパウロンの部屋を訪れたとき同様、ノックして入った。

 ものの少ない殺風景な部屋には、一見すると誰もいなかったが、よく見ればベッドの掛け布団が膨らんでいる。やはり、横になっているらしかった。

病弱な弟、カファン

「カファン、起きてる?」

「……うん」

 力ない声とともに、カファンがシェピアの方へ顔を向けた。

 健康であったなら、パウロンに負けないほど美しかっただろうその顔は、あまりにも青白く、そして痩せこけていた。

「具合どう?」

「ちょっと、だるい」

「お風呂は、無理よね。体拭く?」

「うん……」

 気だるげに、身を起こしたカファンの服を、シェピアは一枚ずつ脱がしていった。

 上のパジャマとシャツ、それから下のパジャマとパンツ―――すべて脱がせた。

 用意していたお湯にタオルを浸して、軽くしぼり、それでカファンの痩せこけた体をぬぐいはじめた。

弟の体を、ペニスを、タオルでぬぐう

 十四歳のカファンは、ここに引き取られた当時―――五歳くらいのころから、ひどく病弱だった。

 医者に診せても、原因はよくわからず、先天的な虚弱体質なのであろうとしかいわれなかった。

 激しい運動はもちろん無理で、外に散歩に行くのさえ、かなり体調のいいときでないと難しかった。

 具合が悪いときは、いつも部屋で、いまのように寝たきりになっている。

 肩から始まり、骨と皮のみでできているような腕を拭いた。

 それから背中、ひどくへこんだおなかをぬぐい、一度タオルをかえて、細い両足を、それから腰を浮かさせて尻も拭いた。

 もう一度タオルをかえ、最後に性器を、シェピアは拭きはじめた。

 肉体同様、カファンはペニスも貧弱だった。

 その小ささは、痩せた肉体を見るとき以上に、シェピアを哀れな気持ちにさせた。

 さすがにムーネよりはちょっと大きいが、正直ミレンのより小さい。しかも、どこかしなびたような感じがする。

 袋を優しく拭いてやり、それから張りのない包皮を剥きおろして、細かなしわのよった亀頭を丁寧にぬぐってやったが、カファンのペニスは最後まで勃起することはなく、股間に垂れ下がったままだった。

「どうする? ほかにもなにか、してほしいことある?」

 きょうは性処理の必要はないだろうと思いながらも、なにか望むところがあるかも知れないと考え、シェピアは訊ねた。

 カファンは軽く、肩をふるわせてこたえた。

「ちょっと、さむい」

――――――

「あっためて、ほしい」

「ん、わかった」

 うなずき、シェピアは立ちあがって、ガウンを脱いだ。

 ショーツ一枚となり、カファンの隣に横になって、一緒に掛け布団をかぶった。

 包み込むように、シェピアはカファンの背中へ両手をまわした。

 足も、絡めあった。

 カファンもシェピアの背中へ両腕をまわし、胸に顔をうずめていた。

 しばらくそのままでいて、やがて乳房をくちびるに含み、乳首を舐めたり、吸ったりし始めた。

「ん……」

 小さく声を出し、幼子に対するように、シェピアはカファンの頭を撫でてやった。

 そうしていると、いつしか右の太もものあたりに、かたくて熱い感触がふれた。

―――勃ってきたね」

「……うん」

「どうする? 体調悪いならやめといた方がいいかもしれないけど―――口でする?」

 こくりと、カファンがうなずいたので、シェピアもうなずき返した。

布団にくるまったままシックスナイン

「冷えるといけないから、お布団はかぶったままでね」

 布団のなかにもぐり込み、シェピアは暗闇のなか、カファンの体の感触を頼りに、彼のペニスを舐められる位置へと体を移動させた。

 うまく、いわゆるシックスナインの体勢になれたので、ペニスに手を添え、まずは先端にキスをして、それから強すぎる刺激は与えぬよう、ごくゆっくりと亀頭を舐めまわしはじめた。

「あ……」

 カファンのうっとりとした声が、布団のなかまで聞こえてきた。

 シェピアはカファンの裏筋を舐め、睾丸もまた舐めてやった。

 先端に戻り、ペニスを口に含んで、顔を前後にゆっくりと動かした。

 そのまま時間をかけ、射精まで導いてやるつもりだったが、不意にカファンが、「姉さん……」とどこか真剣な声をしていったので、ペニスを口から出した。

 ちょっと考え、体勢をもとどおりにし、カファンに向き合ってから、

「なに?」

 と訊いた。

 カファンはちょっとうつむいて、そしていった。

「姉さんと……したい」

「なに―――を?」

「ほんとうの、セックス」

「それは……だめだよ」

 胸を締め付けられるような感覚を、確かに覚えながら、シェピアはそういった。

「それは、だめ。それはカファンにとっても大切なことだから。いつか、本当に好きなひとができたときのため、取っておくもの」

「そんなひと、できるわけない。できたとしても、ぼくなんかが相手にしてもらえるはず―――ない」

 カファンがシェピアの胸に顔をうずめた。

「それに、本当に好きっていうなら、姉さんのことが、いちばん、本当に好きだ。だから、キスもしたい。セックスもしたい」

「だめ―――だめなの」

「姉さん」

「ほっぺになら、してあげる」

 ちょっとごまかすようにいって、シェピアはカファンの頬に口づけた。

「あと、偽物のセックスなら―――いいよ。してあげる」

「にせもの?」

「うん」

偽物のセックス

 うなずき、シェピアは横になったまま、ショーツを脱いだ。

 それからカファンを仰向けにさせ、ペニスが膣内に入らぬよう注意しながら、彼の腰の上に馬乗りになり、互いの性器を密着させた。

「こうして、こすってあげる」

 前後に腰を揺すり、みずからの性器をもって、カファンの性器を愛撫しだした。

「あ……姉さん、それいい」

 カファンが甘い声を出した。

 シェピアは頬を上気させ、軽くみぶるいした。

 ここまで弟たちに性的な奉仕をし続けたシェピアである。その内にたまるものが全くないわけもなく、すぐに、彼女のヴァギナからは愛液があふれ出た。

「ねえさん……すごい」

「気持ちいい? よかった」

 そんなことを口に出しながら、シェピアもすでに気持ちよくなっている。興奮もしている。無意識のうちに、腰の動きが速く、大きくなってゆく。

 ―――まずいかな?

 そう思う。

 性器と性器をこすりあわせ感じあう、この行為は、例によってパウロンがどこからか知識を仕入れてきて、彼によっておしえてもらったものだが、パウロンの巨根にくらべ、カファンのペニスは小さすぎる。

 同じようにやっていると、勢いあまって、ペニスが膣内に入ってしまうかもしれない。

 でも―――

「あっ、あっ、あっ」

 シェピアの口からも、甘いあえぎがもれる。腰の動きはとまらない。もし入ってしまったら―――それはそれでいいかもしれない。そうなったら事故だ。いいわけがきく。

「カファン、カファン―――わたしも、わたしもよくなってきちゃった」

「ねえさん、ぼく、もう出そう」

「うん、いいよ。いって、いって!」

 カファンのペニスがびくびくと跳ねながら射精するのを、シェピアは自身の外性器で感じた。

 その動きは彼女の陰唇やクリトリスを刺激し、シェピアも同時にオルガスムに達した。

「ああ、ああ!」

 高い声とともに、透明な液が、尿道口から吹き出し、カファンの腰まわりをびしょびしょに濡らしてしまった。

「……姉さん」

 とカファンがいった。彼がまだ、シェピアとのキスや本物のセックスを望んでいることは、その切なげな視線からわかった。

「カファン……」

 ちょっと瞳を潤ませながら、シェピアは性器周辺の感触を確認した。

 カファンのペニスはシェピアのなかに―――入ってはいない。ほっとしたような、残念なような、複雑な気持ちになった。

「ん―――

 といって、ぎこちない笑みをつくり、シェピアはまた、カファンの頬にキスをした。